参考資料


「経営の本質を再考する 理念開発手法」より抜粋

はじめに

■個の使命決定力を高め、本質的に強い組織へ

 株式会社リスペクトは、基本理念を『信頼・尊重・誠を尽くす』、使命を“人間の普遍的・内発的なモチベーションの原点は「使命」にある”との観点から『個の使命決定力を高める』に定め、2002年に設立し創業しました。具体的には、「個」が「組織」に埋没してしまうことなく、「個」が主体的に「組織」を活かす関係への転換を図る効果的手法を提供することです。 

 18年間に渡る一貫した使命実現に向けた取り組み経験から、継続的に成長する企業には共通する三つの普遍的な特徴があることを確信しました。①「明確な理念が存在する」②「所属する社員が理念に共感している」③「理念を磨き続ける習慣がある」ことです。①「明確な理念が存在する」は大前提ですが、②「所属する社員が理念に共感している」が成長の土台であり、③「理念を磨き続ける習慣がある」が現実的なビジネス成果に直結しています。

 「理念」は、「個」と「組織」の双方が意識して磨き現実のビジネスと紡ぎ続けていないと、いつの間にかその存在が曖昧になります。また、「組織」が大きくなり、拠点が分散するほど、「理念」を磨く意識が希薄になります。本来、企業は同業他社でさえもそれぞれに本質的な違いがあり、根源的な差別化戦略があるのが当たり前です。しかし、「理念」に対する意識の薄れから現実的・合理的戦略だけが重視されるようになります。こうして良いライバル関係で切磋琢磨するはずの同業他社の間でお互いを潰し合うような競争が起こり、本来は根源的に必ず存在しているはずのマーケットからの信頼を失ってしまうようになるのです。近年、このような「理念不在」の傾向が極度に進んだ企業が散見され、目を覆いたくなるような経営不祥事が発生しています。

 

 2020年1月、世界中を席巻する新型コロナウィルス禍が発生しました。これまで当たり前と考えていた日常や価値観が世界中同時に一変し、人間社会の安心安全とは何かについて深く考えさせられることになりました。また、企業活動においては、外出規制環境下における巣ごもり消費やテレワーク関連などの分野が業績を伸ばす一方、それ以外の多分野においては企業活動そのものが停止したり、大幅な縮小となり、これまで経験したことのない閉塞状況に陥りました。このような状況の中、多くの企業経営者が経営の根本的な在り方を見つめ直す意識になったのではないでしょうか。間違いなく価値観が一変する時代に「我が社は何のために存在するのか?」という根源的な存在意義を真剣に見つめ直し、新たな時代に合った真に必要とされるビジネスモデル再構築を迫られているようです。このタイミングを「経営」の「核」である「企業理念」を再考するチャンスととらえてはどうでしょうか。

 

 本書では、「企業の理念」はどうあるべきか、もし「理念」に問題があればそれはどのように再構築すべきかについて、私どもなりの考察を述べさせていただきました。

 特に企業理念の開発手法については、弊社が実際に企業理念開発プロジェクトで実践している内容を網羅し、現実的な活用場面を意識して執筆しました。最後までお付き合いいただければと存じます。

 

■リスペクトの企業理念開発プロジェクト

 「個の使命」による組織活性化を主業務としている株式会社リスペクトが、企業理念開発にまで踏み込んで取り組むようになったのは何故でしょうか。それはコミュニケーションデザイナー・足立光正氏との出合いがきっかけです。

 足立氏はシンクタンク・トータルメディア開発研究所のブレインとして、1970年代から同社のCI計画プロジェクトに参加し、特にその中で企業理念開発を担当して来られました。彼はトータルメディアのブレインだった30年間に約60社のCI計画プロジェクトに参加し、その内の約40社の企業理念開発を担当したということです。

  2004年にはその経験を基に『「企業理念」開発プロジェクト』(ダイヤモンド社刊)という日本初の企業理念の開発ノウハウ書を上梓されて話題となりました。

 足立氏の企業理念についての基本的な考え方は簡単明瞭です。

①「理念」に共感する人が集まって組織になる

  トップリーダーの「理念」に共感する人々が集まって「組織」になります。これは、企業組織も、宗教組織も、その他の団体組織なども同じです。「組織とは、理念によって結ばれた人間関係」なのです。

②共感はしても理念に対する個人の理解はバラバラである

 しかし組織にはそれぞれ異なった個性(理念)を持つ個人が集合するため、「組織理念」に対する理解の仕方にバラツキがあり、なかなかトップリーダーが考えるような、一体感を持って効率良く活動する「理念組織」にはなっていきません。

③だから企業は理念を明示し、その理解を組織に積極的に浸透させなければならない

 そのために、トップリーダーの理念(思い)を分かりやすくまとめて、組織に参加する全ての人々に伝え、誰もが心を合わせて組織活動が出来るようにすることが大切なのです。

 この企業理念に関する彼の考えは、まさにリスペクトの組織における組織活性化の考え方と全く同じでした。

 そこでリスペクトは、足立氏に弊社のブレインとしてご参加頂き、企業理念の課題を抱えておられる企業様に対し、企業理念開発プロジェクトのサポートをすることにしたのです。

 お陰様でリスペクトは、これまで十数社のお客様の企業理念開発をサポートさせて頂いて参りました。本書ではそのプロジェクトのエッセンスを紹介させて頂いております。

 本書が、直面する混迷した時代、その後に控えるこれ迄経験したことのない新しい価値観の時代に、それぞれの企業様の普遍的な存在意義を再考する参考となれば幸いでございます。

 皆様の一層のご発展をお祈り申し上げます。

 

 2020年5月  株式会社リスペクト代表取締役 岡田裕二

 

本書本文はkindle版にて販売をしております。ご興味のある方はコチラからご購入下さい。